末の松山 波越さじとは

2021年01月18日 09時00分

 子どものころに百人一首で遊んだことがある、という人は多いのでないか。当方もその一人である。歌の意味は分からなくとも、音の響きと筆文字の形を覚えてしまえば、あとは普通のかるたのように楽しめるのだ

 ▼その中に清少納言の父清原元輔の歌があった。「契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは」。今の言葉にすると、「二人で泣きながら永遠の愛を誓った」といったところだろう。言わずと知れた恋歌だが、注目したいのは「末の松山 波越さじとは」の部分。末の松山とは宮城県多賀城市の海岸近くにある丘陵地で、どんな大きな津波が来ても水に漬からない所とされていた。永遠の愛を語りながら自然災害に対する知恵も織り込んでいたのである

 ▼詠まれたのは951年。やはり東北地方太平洋側で大津波が発生し、大きな被害が出た869年の貞観地震が歌の背景にあったとみられている。平安時代も人々が自然災害を身近に感じていたことを示す貴重な証拠といえよう。さらに遡り、文字も何もない縄文時代あたりになるともう自然災害の歴史を知るすべはないのだろうか。そんなことはない。考古学がその仕事に当たっている

 ▼『北海道の防災考古学~遺跡の発掘から見えてくる天災』(みつ印刷)に教えられた。発掘調査で明らかになった大昔の地震や津波、洪水の痕跡をまとめた労作である。天災は繰り返す。できるだけ古くからの歴史を押さえておくに越したことはない。危険な場所が特定されると、安全な「末の松山」もおのずから浮かび上がってこよう。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 川崎建設
  • 古垣建設
  • web企画

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,425)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,291)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,259)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,124)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (843)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。