いきなりだがクイズを一問。「世界で最も人間を殺している生物は何でしょう?」。事実の意外さに驚くトリビアとして紹介されることも多いため、ご存じの人も多いのでないか。答えは蚊である
▼ライオンやワニ、毒ヘビといったいかにも怖い動物をつい思い浮かべてしまいがちだが、蚊に比べるとかわいいもの。一説では年間の死者が20人程度のライオンに対し、蚊は75万人ともいわれる。危険性ははるかに高い。もっとも蚊自体に高い攻撃能力があるわけではなく、マラリアやデング熱などのウイルスを媒介する結果である。現在マラリアは海外から持ち込まない限り発症しないが、日本でもかつて猛威を振るった時代があった
▼「ひとりづつ家族を覚ましひとつの蚊」金子潮。病の原因になってもならなくても蚊のうっとうしさは変わらない。ネコも同じだったらしい。岩手大を中心とするグループがマタタビに対するネコの特有反応を調べたところ、マタタビから蚊を寄せ付けない物質を発見したという。今研究で初めて、マタタビ反応を誘発するのが「ネペタラクトール」という物質であると同定。実験により蚊が嫌うことも明らかにした。つまりネコにマタタビをあげると狂ったように体をすりつけるのは、進化の過程で蚊を忌避する方法を獲得したからだというのである
▼検証のため他の動物でも試したところ、同じ結果を示したそうだ。今後は人間を苦しめる寄生虫やウイルスを運ぶ蚊の忌避剤として活用する道を探るという。「世界で最も人間を殺している生物」でなくなる日も近いのでは。