感染症法改正

2021年01月28日 09時00分

 少し先の未来に起こる殺人を事前に察知し、犯人となる人物を先に逮捕することで犯罪を未然に防ぐ。トム・クルーズ主演の米SF映画『マイノリティ・リポート』(2002年、ドリームワークス)はそんな物語だった

 ▼予知能力を持った3人の「プリコグ」の報告に基づき、トムら犯罪予防局の刑事が近い将来殺人事件を犯す人物の確保に向かう。このシステムの導入でワシントンDCから殺人事件は一掃される。ただ、逮捕される方はたまったものではない。その時点ではただ普通に毎日の生活を送っているだけなのである。「あなたは将来殺人を犯します」と突然宣告されて、「はい分かりました」と納得する人はいないだろう

 ▼今国会で議論が進むインフルエンザ特別措置法と感染症法の改正案で、入院に応じない感染者へ罰則を与えることに違和感を覚えるのもそれと似たところがある。「入院に応じない」段階ではまだ感染を広げているとはいえない。改正案は未来の出来事に網をかけるものなのだ。ウイルス保有者が明確な意図を持って他人に感染させたのなら傷害罪が成立しよう。罰則があるのも当然である。一方、新型コロナの場合、感染経路は不明なことが多く、感染者10人のうち8人は感染を広げないとされている。公正な法の執行は本当に可能なのか

 ▼先の映画では刑事のトムが殺人者と宣告され、当局に追われる羽目となる。予知の暴走のようだが誰も止められない。感染症法改正もそれ自体が人権の侵害や新たな差別、分断を生む原因にならないよう慎重に取り扱わねばなるまい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 川崎建設
  • オノデラ
  • 東宏

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,465)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,287)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,181)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,078)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (806)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。