小説家の町田康さんがエッセーに「心の強化のマナー」について書いていた。現代は表向き優しい社会のため、暗い感情が裏に回り、少しの言葉にも傷つく人が増えたというのである。だからあえて、「刺激的な言語というものを用いて、人の心を強化する」必要があるとの主張だった
▼もちろん冗談半分だが、一面の真実を含んでもいよう。こちらはそんな心の強化にぴったりでないか。かなり刺激的な言葉も並ぶ。ことしも第一生命の「サラリーマン川柳」(第34回)優秀100句が発表になった。珠玉の作品を幾つか紹介したい。「十万円見る事もなく妻のもの」はかなき夢。確かにもらったはずの特別定額給付金だが一体どこへ行ったか
▼「ハンコ不要出社も不要次はオレ?」我楽多魔手箱。なくてもいなくても仕事は回る。実は自分が一番よく知っていた。「我が部署は次世代おらず5爺(ファイブジイ)」松庵。これは5Gのことだよ、と教えられてもピンとこなければもう立派に「爺」の仲間である。今回目立つのはやはり新型コロナ関連だ。「咳き込んで視線が痛い電車内」愛飲酒多飲。いや、これは、唾が変な所に入っただけで…。心の中で必死に言い訳した人も多かったに違いない
▼「マイクON部長の悪口配信中」逆ペリカン。リモート会議ゆえの悲劇だが、意外と悪口を言った人の評価が後から社内でうなぎ上りだったりして。「密ですとますます部下は近よらぬ」急いで待て。一応上司なのだが部下にはウイルスと思われているのだろうか。優秀100句全作品は同社のHPでどうぞ