街中で立ち止まっている人を見ると、たいていスマートフォンの画面を眺めているか指で文字を打っている。電車の中も似たようなもの。世の中の人が皆、スマホを手から放すと悪いことが起こると信じているようにさえ見える
▼フェイスブックやインスタグラム、ツイッター、ユーチューブといったSNSに音楽、ニュース、調べ物まで。求めるものがほぼこの小さな機械で見つけられるのだからそれも当たり前か。コロナ禍でその傾向はさらに強まった観がある。特に若者はもともとスマホと親和性が高かったため、より影響が大きいようだ。3密回避のため授業や仕事がリモート化し、家にいる時間が増えたためだろう。一日中スマホを離さないわが子を心配する親御さんも多いのでないか
▼スマホの長時間使用に警鐘を鳴らす話題の書『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン、新潮新書)が売れているのもそんな事情からに違いない。筆者も読んでみたが、心の病、IQの低下、依存など気になる言葉が並ぶ。内容は多岐にわたるが、要するにスマホは近くにあるだけで人から集中力を奪い、精神的不調を増やすというのである。常にスマホを気にしている状態が脳の中枢に負荷を掛けるためだという。著者はスウェーデンの精神科医として多くの例を見てきたそうだ
▼この論考の正確性を判断するには時間が必要だが、自分の経験から納得できる点も少なくなかった。実際、スマホに操られているかのような今の世の中を見渡せば、しばし歩調を緩めて付き合い方を見直した方がいいような気もしてくる。