新型コロナウイルスワクチンの国内接種が17日に始まった。まず医療従事者からだが、最前線に立つ方々がサージカルマスクやアイソレーションガウンより強い防護力を備える意義は大きい
▼重症者、死者の多くが高齢者であることを考えると、優先される医療従事者約370万人と高齢者・基礎疾患を持つ人約4420万人の接種が済めば事態が格段に改善されるのは間違いない。感染対策は大きな曲がり角に来た。副反応を気にする向きもあろう。現在承認されているファイザー製は20万件に1件の割合で重い急性アレルギー反応が出るそうだ。解釈に悩む数字だが、飛行機で死亡事故に遭う確率が10万分の1未満といわれている。単純比較はできないものの一つの目安にはなるのでないか。ただ最終的に決めるのは自分である
▼むしろ心配になるのは別の副反応のことだ。社会的副反応とでも呼ぶべきだろうか。緊急事態宣言や外出自粛といった行動制限による弊害が急速に広がり、日々深刻さを増している。主なものを挙げると、まずはGDPだ。内閣府の発表では前年比マイナス4.8%とリーマンショック後以来の落ち込み。一方、昨年の自殺者数は11年ぶりに増加に転じた。また国立成育医療研究センターの調査では高校生の3割に中等度以上のうつ症状が見つかったという
▼これらは行動制限という劇薬が使われている限り悪化していく。ところが政府の行動制限解除に向けた動きは近頃迷走ぎみだ。ワクチンが効いても行動制限で命を落とす人が出ては元も子もない。見極めはできているのか。