本田技研工業を創業した本田宗一郎氏は時間の重要性をよく理解していた。だからだろう。何でも時間に置き換えて考えてみるところがあったという。例えば自身の愛用する増毛剤についても、「意識しないうちに、毛の長くまとまっている時間を延ばそうと思っているのだ」(『俺の考え』新潮文庫)といった具合
▼もちろん工場のシステムや道路はいわずもがな。時間を効率よく使う視点を持つべきと説いている。その根底にはこんな信念があったようだ。「時間だけは神様が平等に与えてくださった。これをいかに有効に使うかはその人の才覚であって、うまく利用した人がこの世の中の成功者なんだ」。分かっていても実行するのはなかなか難しい
▼さて、受験生たちは神様が与えてくれた1日を有効に使えただろうか。道内の公立高校一般入試の日程が、大雪による交通障害の影響で当初の3、4日から4、5日にずらされた。受験生たちは急きょ決められた日程変更に戸惑いを隠せなかったのでないか。「真夜中に寝る子起きる子大試験」及川青山子。当日まではと体力の限界に挑戦する子、体調を崩しては何もならないと調整に入る子、いろいろな受験生がいよう。いずれにせよ肝心なのは試験日に自分を万全の状態に持っていくことである
▼本田氏はこうも語っていた。「絶対に同条件で二度ともらえないものは時間である。過ぎ去っているから」。勉強し、息抜きをし、直前にぽっかり空いた1日を過ごす。一つ一つ積み重ねてきた時間が試される入試はいよいよきょうから。頑張ってほしい。