まだ子どものころだったが、山本リンダさんのヒット曲『狙いうち』(阿久悠作詞、都倉俊一作曲)を初めてテレビで見たときは驚いたものだ。同じ時代を過ごした方はお分かりだろう
▼オペラ「カルメン」で使われるような情熱的な衣装に、「ウララ ウララ ウラウラで ウララ ウララ ウラウラよ」というまるで意味不明の歌い出し。その当時は、ちょっと見てはいけないものを見ている気がしたものである。曲はどんどん盛り上がっていき、サビの部分で最高潮に達する。「弓をきりきり心臓めがけ 逃がさないパッと狙いうち」。どれだけの男性が心を打ち抜かれたことか
▼ところで東京都が今回、弓をきりきりと引いて狙い撃ったのは飲食チェーン「グローバルダイニング」だった。従わない場合には罰則が課される営業時間短縮命令を18日、発出したのである。都が改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、午後8時以降の閉店を要請した1月8日以降もこれに応じなかったためだという。グローバルは22日、これを不服として都を提訴。緊急事態宣言の解除直前、しかも感染拡大が下火になっていた中での時短命令は違法との主張である。状況はその通り。少々都の強引さが目立つ
▼逆に考えると同社はそれだけの間、感染者を出していなかったわけでむしろ感染対策と雇用維持の優等生ともいえる。共にコロナと戦う道も選べたはず。この件は都が営業継続を公言して気に入らない会社を狙い撃ちしたように見える。見てはいけないものを見ている気がするのはそのせいかもしれぬ。