コントグループ「ザ・ドリフターズ」のメンバーで人気コメディアンの志村けんさんが亡くなってきょうでちょうど1年になる。志村さんの命を奪ったのは新型コロナウイルスによる肺炎だった。今になってみるとその悲劇がコロナに対する人々の警戒心を高める大きなきっかけになったように思える
▼「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」という。まさにそれだろう。本当はもっと笑いを見ていたかったが。つい先日、酒屋で思わぬものを見つけてうれしくなり、すぐに買ってしまった。ラベルに志村さんの言葉が記された「ワンカップ大吟醸」である。形は定番の180㍉㍑入りずんどう瓶だ。大関が「〝言葉を肴に〟志村さんと一緒に飲んでいるようなひと時を」と発売したらしい。なかなか粋な企画でないか
▼ラベルは6種類。言葉も酒も味わいながら全部飲んでしまった。幾つか紹介させてもらいたい。「イヤなことがあっても思いきり笑えば忘れられる」。間違いない。随分とお世話になった。「待っていたって何も起こらないんだ」。つまらないと文句ばかり言っていないで、自ら楽しいことを探しに行きなさいというのである。「人間には〝無駄〟が必要なんだ」。遊びや余裕がないと人はおかしくなってしまうものなのだろう
▼コロナ感染を恐れ、何かといえば気持ちがささくれ立ちがちなこのご時世。志村さんの言葉が一層快く胸に響く。もし今も生きていたとしたら、テレビの向こうから元気をなくしているわれわれにきっと笑顔でこう言ってくれたろう。「だいじょうぶだぁ」。