日鉄防食(本社・東京)のチタンカバー・ペトロラタム被覆(TP)工法を採用した室蘭市発注の室蘭港崎守地区崎守埠頭6号岸壁防食工事が完了した。岸壁の上部を支える鋼管杭をペトロラタム系防食剤で被覆し、チタンの保護カバーで固定して防食する工法で、優れた耐久性を持つ。室蘭港の公共埠頭では初採用。市は「有用性が確認できれば今後も採用し、室蘭港の施設長寿命化に生かしたい」と話している。
崎守埠頭6号岸壁は、ガントリークレーンを有するコンテナヤードとして延長330m、水深14mを1996年度に整備。現在はコンテナ船のコンテナや鋼材の荷役に使われている。
岸壁は根入れ式鋼矢板セル構造で、全体で96本の鋼管杭を設置しているが、老朽化や海水による腐食が進み、うち2本について2016年度の点検診断で対策を講じる必要があると判断。工事は木島建設が担当し、20年11月に始まり、3月19日に完了した。
ペトロラタム系防食剤による鋼管杭の被覆では、一般的にFRP製の保護カバーなどが用いられるが、TP工法では保護カバーにチタンを使う。チタンは海洋環境ではほとんど腐食せず、波浪や漂流物による耐衝撃性も高い利点がある。
耐久性は50年程度に伸び、マイクロプラスチックの懸念がないなど環境面でも優れている。初期建設費用はFRP製保護カバーを使った工法と変わらないという。
道内の公共埠頭では、室蘭開建発注の苫小牧港西港区北埠頭マイナス7・5m岸壁改良(五洋建設)や釧路開建発注の釧路港マイナス14m岸壁A部本体(岩倉建設・渡辺建設工業共同体)などで施工実績がある。
室蘭港では日本製鉄室蘭製鉄所構内、原料ヤード桟橋となる18、19バースの鋼管杭、19バース先端の綱取りドルフィン鋼管杭にそれぞれ施工している。
(北海道建設新聞2021年4月5日付3面より)