去年は少し縁があり、沼田町に何度か足を運んだ。初めて行ったときにはまず大きなオブジェのような沼田小学校に目を見張った。聞けばアトリエブンクの作品という。本道でも進む小中連携、一貫教育の先駆けとなる一校だそうだ
▼子育て支援と移住促進には特に熱心な町なのである。その実力は宝島社が発行する『田舎暮らしの本』の「2021年版 住みたい田舎ベストランキング」で全国総合2位に輝くほど。小さな町だが相当に頑張り、成果も上げている。逆に言うとこれくらい積極的でないと明るい未来は開けないということだろう。危機感をばねにしているのだ
▼こんなニュースを見るとそれもうなずける。10―40年の間に20歳から39歳までの女性数が半分以下に減る「消滅可能性都市」が、全市区町村の半分を超える927市区町村に達しているそうだ。日本生産性本部が5日発表した「社会ビジョン委員会報告書」で明らかになった。14年時点では896市区町村だったがじわじわと増えている。同本部は「消滅可能性都市がさらに増加することが危惧される」と警鐘を鳴らす。少子化や都市部への女性流出が続いている上、昨今は新型コロナウイルスの影響で出生数も減っているためだ
▼悪い流れを止めるには安心して子どもを産み、子育てをしながらストレスなく働ける環境が不可欠。ただ、どこでも沼田町のように手厚い支援ができるわけではない。国のてこ入れが必要だ。菅首相は教育や福祉を一元化する「こども庁」の創設に意欲を示すが、急がねば可能性は遠からず確定に変わる。