音楽バラエティーの草分けともいえる『シャボン玉ホリデー』(日本テレビ)の定番コントに、「寝たきりの父親の世話をする孝行娘」があった。父親役はハナ肇、娘役がザ・ピーナッツである
▼やりとりは毎回同じ。父親が病気で床に伏せっている。娘「おとうさん、おかゆができたわよ」。父親「すまない、おまえには迷惑ばかり掛けて。おっかあさえ生きていてくれたらな」。娘「それは言わない約束でしょ」。そんな往年の定番コントを思い出したのは、「ヤングケアラー」という聞き慣れない言葉を耳にしたからである。本来なら大人がするべき親兄弟の介護や家事を、日常的に担っている若年者のことだという。もはや子が親に仕える時代ではないが、今でも似たような状況に置かれた若年者はかなり多いらしい
▼厚生労働省が昨年12月からことし2月にかけて初の実態調査を実施。結果をおととい発表した。「世話をしている家族がいる」と回答した中学2年生が6%、高校2年生が4%いたそうだ。学校基本調査の2020年度データを見ると、中学生は全国で321万人、高校生は308万人。先の比率だと、およそ中学に19万人、高校に12万人のヤングケアラーがいる計算になる。家庭のことだけに誰にも相談できず、抱え込む子どもも少なくないのだとか
▼調査では健康状態が悪かったり、学業や部活に支障が出たりと深刻な影響が出ている実態も明らかになった。早く見つけて福祉支援につなげる必要がある。こればかりはコントのように「お呼びじゃない」と逃げるわけにはいかない。