脱炭素化、SDGs、デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進―。今はそんな難しい言葉が企業の成長を左右する時代らしい。しかも流れに任せていれば何とかなると、のんびり構えていてはいけないようだ
▼「成長は自動的には起こらない。事業の成功によって、自動的にもたらされるものではない」。経営学者P・F・ドラッカーも『マネジメント 基本と原則』(ダイヤモンド社)にそう記していた。ではどうすればいいのか。「成長には戦略が必要である。準備が必要である。なりたいと思うことに焦点を合わせた行動が必要である」。目標を定め、自らを変えてゆけとの教えだろう。最近のトヨタ自動車はそれを実践しているように見える
▼未来都市「ウーブン・シティ」の建設やソフトウェアエンジニアの大幅採用増は既に話題になった。今度は「水素エンジン」の技術開発に取り組むそうだ。カローラスポーツベースの競技車に水素エンジンを積み、来月の24時間レースに投入するという。今までも燃料電池車「MIRAI」で水素は利用していたが、内燃機関で直接水素を使う技術を確立できれば国際競争の大きな武器になる。既存技術を生かせる上、高コストで耐用年数も短い電池を搭載せずに済むためだ
▼水素も太陽光発電で製造する「福島水素エネルギー研究フィールド」から調達。福島の復興にも一石を投じる。車の脱炭素化は世界的にEV先行で進んでいるが、エンジンが成功し市場の支持を得られるなら逆転も夢ではない。その準備を怠らない姿勢にトヨタの底力を見た。