大規模接種とメディア

2021年05月20日 09時00分

 本紙の読者なら、道路啓開という作業があるのをご存じのはず。地震や水害といった大規模自然災害が発生したとき、緊急車両などが通行できるようざっくりと道を開け、救援ルートを確保することである

 ▼1分1秒の遅れが被災者の命を左右するため、とにかくスピード優先。最低限のがれき除去処理と簡易な段差修正のみで、車両が行き来できるだけの環境を整えるのだ。おかげでどれだけ多くの命が救われたか。この作業を見て、「どうして舗装しない、路盤整正くらいしろ」と文句をつける人はいないだろう。非常時には自ずと優先順位が変わる。のんきに舗装している間に命が失われては元も子もない

 ▼防衛省が17日に始めた新型コロナウイルスワクチン大規模接種の予約システムを巡る出来事も、これと同じに見える。毎日新聞と朝日新聞系列の「AERA dot. 」が不正な方法で予約を実行し、システムに欠陥があると報じたのである。道路を舗装しないまま始めるのはけしからんというわけだ。システムに甘さがあったのは間違いない。架空の番号でも予約可能な点である。ただ通常の手続きで支障が出る部分ではない。今は多くの命を守るため突貫作業でも接種を急ぐ方が優先だ。メディアが不正予約の手順を事細かに伝えるのは、いたずらを助長する行為でないか

 ▼防衛省はこの報道に抗議したようだが、毎日新聞は公益性があったと反論。立憲民主党の枝野代表も不正予約報道に感謝すべきと擁護した。日本が大規模災害の真っただ中で苦しんでいる現実を忘れているとしか思えない。


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