このご時世で肩身の狭いカラオケだが、行けば一度は必ずこの曲を歌うという年配の男性も多いに違いない。シンガーソングライター河島英五の『酒と泪と男と女』(1976年)である
▼このフレーズが印象的だった。「飲んで飲んで飲まれて飲んで 飲んで飲みつぶれて寝むるまで飲んで やがて男は静かに寝むるのでしょう」。寂しさや悲しみを酒で紛らすしかない男の惨めさが、わがことのように感じられる。植木等でなくとも、「わかっちゃいるけどやめられない」のだ。つらくても楽しくても、いったん飲み始めると止めるのが難しくなるのが酒である。翌朝、二日酔いの頭を抱えて後悔するところまでがお決まりのコースだろう
▼近頃はアルコール度数が高いのに安く飲みやすい酒が増えた。効率よく酔うためわざわざそういう酒ばかり選んで飲む人もいると聞く。9%の酎ハイは本来ごくごく飲んでよい代物ではない。ただパーセントや度数ではアルコール摂取量がよく分からないのも当たり前か。そこで厚生労働省が今春から対策に本腰を入れだした。缶ビールや酎ハイの容器にアルコール量をグラムでも表示するよう業界に要請したのである。生活習慣病のリスクが高まるのは1日当たり男性40㌘以上、女性20㌘以上だ。例えば350㍉㍑缶なら5%で14㌘、9%で25㌘のアルコールが含まれる。表示されると分かりやすい
▼「飲んで飲んで飲まれて飲んで」。〝9%の缶酎ハイ500㍉㍑2本でもう72㌘。きょうはこれくらいにしとくか〟。飲みつぶれて眠るのは避けられるかもしれない。