旭川医大学長の問題行動

2021年07月01日 09時00分

 引き際の見事さが語り継がれる経営者の一人に本田技研工業創業者の本田宗一郎氏がいる。勇退を決めたのは事業が軌道に乗り、これからさらに発展が見込まれるという時だった。健康で気力も十分だったが、自分の頭が固くなっていることを自覚したのである

 ▼そんなときにできることは「己れの古さに気づいた時、あっさりと若い生きのいい連中にバトンタッチすることだけだ」(『俺の考え』新潮文庫)。潔い。だからだろう。頭が古いのに組織の頂点にしがみつきたがる経営者には辛口だった。そういう者は会社がうまくいかなくなると「なんでも金や政治力でカバーしようとする」というのである。「頭が痛いのに、お尻に膏薬をはるようなものだ」。なかなか手厳しい

 ▼旭川医大の学長選考会議が28日発表した吉田晃敏学長の数々の問題行動を聞き、先の話を思い出した。吉田学長は69歳で任期は2007年から現在まで14年と長期に及ぶ。楯突く者は即刻排除する絶対君主のような存在だったらしい。吉田学長が注目されたきっかけは新型コロナ患者受け入れを進言した当時の大学病院長に辞任を迫った一件だった。調べると他にも職員へのパワーハラスメントや700万円超の不正支出、学外での暴言などいろいろ問題が出てきたそうだ。トップの座にしがみつきたいがために不都合な事実は金や政治力で抑え込んでいたのだろう

 ▼同会議は文部科学相に学長解任を申し立てている。吉田学長も異論を謙虚に聞けなくなった時点で潔く身を引けばよかった。お尻に膏薬で晩節を汚したのでないか。


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