原子力規制委員会で初代委員長を務めた田中俊一氏は原子力発電について、「原子力宗教」の言葉を使って懸念を表明していた。「2000年、3000年先の未来まで、原子力のエネルギーで賄うと言う人が未だにいるんですよ。燃料サイクルにこだわって。それは、ちょっと行き過ぎだと思います」
▼サイクル技術にも限界が見える。原子力をこの先永遠に頼れるエネルギー源と信じるのは無理だというのである。当時担当大臣だった細野豪志衆院議員が2月に出した『東電福島原発事故 自己調査報告』(徳間書店)の中で語っていた。一方で燃料の海外依存や脱炭素、再生エネルギーの効率の低さから原子力発電はまだ「相当な長期間は必要」とも指摘している。氏に同意する人も多いのでないか
▼このところ日本は毎年、電力危機に襲われる。昨冬も本州各地で供給予備率が数%に落ち、いつブラックアウトが起きてもおかしくなかった。胆振東部地震を経験した本道はその怖さを身に染みて知っている。安定したベース電源の確保が望まれるところだが、本道で最近一つ大きな動きがあった。原子力規制委員会が2日、北電泊原発の敷地内にある断層を〝活断層ではない〟と判断したのである
▼委員会のかたくなさに北電の不手際も重なり、審査に8年もかかってしまった。科学的検証に時間を要したというより、互いへの不信感でこじれにこじれた感が否めない。とはいえこれで再稼働に向け最大の難関は越えた。田中氏の言うように次のベース電源が見つかるまで、もうひと働きしてもらいたい。