先週木曜日の午後7時半頃、東京都板橋区の東武東上線踏切で31歳の女性が電車にはねられ死亡する事故があった。女性は線路の上に黙って立っていたそうだ。どうしてそんな危険な所にいたのか
▼警視庁が事故と自殺の両面で捜査を進めると、意外な事実が浮かび上がってきた。事故を招いたのは、いわゆる〝ながらスマホ〟だったというのである。女性は自分から見て、出口側の遮断機の内側手前で止まっていた。警報音が鳴った時もスマホを見ていたため既に踏切内にいることに気づかず、そのまま歩き続けて入り口側遮断機の手前で止まったと思い込んだらしい。そんなばかな話が、ともいえないようだ
▼『スマホ脳』(新潮新書)によると「脳には切替時間が必要」で、「集中する先を切り替えた後、再び元の作業に100%集中できるまでには何分も時間がかかる」そう。つまり一瞬でもスマホに集中すると、自分では周りの状況に注意を移したと思っても、心はしばしスマホに残ったままなのである。実際、他のことをしながらでも、少しならスマホを見ても大丈夫と考える人は多いのでないか。何かあればすぐに対処できるさ、と。ただ、それは時と場合による
▼例えば〝ながら運転〟は違法だが、車や自転車の運転中、一瞬ならとスマホを注視する人がいまだにいる。ところが脳の仕組み上、以後数分は外部の新たな刺激に反応できない可能性があるのだ。これはかなり怖い。踏切事故のときも他の通行人はほとんどスマホを眺めていて、誰も声を上げなかったのだとか。現代のホラーだろう。