今放送しているNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』の少し前の回に、主人公百音の幼なじみ亮の家族に触れた場面があった。舞台は気仙沼市の離島亀島。中学生の時に起きた東日本大震災で亮は母親を失っている。逃げ遅れて津波にのまれたらしい
▼らしい、というのはドラマで詳しい説明がないからである。状況から行方不明になったままのようだ。亮の父親は立ち直れず、5年後も酒浸りの生活を続けていた。多くの手記を読むと家族にとって遺体が見つからない現実ほどつらいものはないそうだ。生存は諦めざるを得なくとも、いつまでも水の中、土の下にいさせるのは忍びない。気持ちの整理もできないのだ。それはどんな災害でも変わるまい
▼大雨の影響で上流部の違法な盛り土が全層崩壊した熱海市の土石流災害からもうすぐ20日。連絡の取れない行方不明者は14日時点で17人だったが、現在までに7人の遺体を発見。まだ10人が見つかっていない。家族らは一日も早くと祈るような思いでないか。それにしても被災者のために今も懸命の捜索を続ける自衛隊や警察、消防には頭が下がる。狭い谷で大きな重機が入れないため、活動は手作業による人海戦術が主だという。大雨や猛暑の中で一日中、泥まみれでがれきや土砂に立ち向かっている。排除した泥土の搬出には地元の建設業者も協力しているそうだ
▼現時点で行方不明者が生きている可能性はほぼない。それでも早く出してあげたいと奮闘しているのである。土の下に埋められている人だけでなく、残された人の未来も救っているのだ。