広島原爆の日

2021年08月06日 09時00分

 谷川俊太郎さんの最新詩集『どこからか言葉が』(朝日新聞出版)を読んでいて、「はらっぱ」の詩に目が止まった。全てひらがなで書かれた一編は見た目優しいが、言葉は驚くほど重い

 ▼子どもらが原っぱで遊んでいる風景にこんな一節が続く。「おとなはわらいながらそれをみまもる それをえにかく うたにする おはなしにする それからそれをおもいでにして せんそうをしによそのくにへでかけていく」。どこの国へ行ったのか、何のための戦争かは記されていない。ただ、次の場面では子どもらが同じ原っぱで目の覚めぬ眠りについていて、大人たちは二度と戻ってこなかった。日常の中に潜む狂気と、圧倒的な悲しみが伝わってくる

 ▼きょうは広島の「原爆の日」。ことしも太平洋戦争を思い出し、戦争のない世界の実現に向け誓いを新たにする季節が巡ってきた。戦後76年だが過去を忘れてはいけない。御年89歳の谷川さんが昔見た光景を元に今なお詩を作り続ける理由もそんなところにあろう。ことしは東京オリンピックと重なった。こちらも平和について考えるのには格好の材料である。今大会でも米国と中国、サウジアラビアとイスラエルといった普段は緊張関係にある国の選手同士でエールを交換する様子が見られた。平和な世界を先取りした姿だろう

 ▼200を超える国と地域の人が垣根を越えて集まるオリンピックは、いわば世界の「はらっぱ」。今のところこれを思い出に戦争をしによその国へ出掛けていく動きはなさそうだ。いつまでも平和が続いてほしいと慰霊の日に願う。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • web企画
  • 北海道水替事業協同組合

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,398)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,265)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,239)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,108)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (887)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。