おとといからきのうにかけ、全道で暴風が吹き荒れた。竜巻注意情報がひっきりなしに出ていたくらいである。甚大な被害は伝えられていないものの、気付けば外に置いてあった物がなくなっていたという人も多いのでないか。風は固定されていない物を容赦なく吹き飛ばす。弱い所を決して見逃さない
▼本欄にも度々登場する歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は新型コロナウイルスもそれと同じだと指摘する。ウイルスが猛威を振るった結果、目くらましの覆いが飛ばされ、社会の弱い部分が明るみに出たというのである。著書『エマニュエル・トッドの思考地図』(筑摩書房)に記していた。コロナ禍の世の中の様子を眺めると、なるほど納得せざるを得ない
▼日本の弱さは何だろう。トッド氏は言及していないが、その大きな一つは生活の糧を失った若者や社会的弱者、学びの場や友だちと楽しく遊ぶ機会を奪われた子どもたちへの冷淡さかもしれない。大変な時期だからと我慢を強いるばかりである。折しも自民党総裁選へ向けた動きが活発になっている。立候補予定者の主張も聞こえ始めた。ただ、今のところ天下国家を声高に論じる人はいても、子どもたちの苦境について親身に語る人はいないようだ。残念なことである
▼日本では高齢化対策の手厚さに比べ少子化対策の中途半端さが目立つ。子ども関連の施策の弱さもその延長線上にあろう。健やかに育つ若年層がたくさんいなければ政治家がいくら天下国家を論じても無意味だ。総裁選候補者にはその辺の自覚がどの程度おありだろうか。