日本の人気ロックバンド「BUMP OF CHICKEN」(バンプ・オブ・チキン)の楽曲の一つに『アンサー』がある。自分の生きるべき道を見つけたときの高揚感を歌ったものだ
▼中にこんな一節があった。「だからもう 忘れない 忘れない 二度ともう 迷わない 迷わない 心臓が動いてる事の 吸って吐いてが続く事の 心がずっと熱い事の 確かな理由が」。実はこれ、将棋アニメの主題歌である。15歳でプロ棋士になった少年の青春を描く『3月のライオン』(羽海野チカ)の歌だが、題材は同じ将棋でも村田英雄さんの「吹けば飛ぶような」『王将』(西條八十作詞、船村徹作曲)とはずいぶん趣が違う
▼この人に似つかわしいのは、もちろん『アンサー』の方だろう。将棋の藤井聡太さんである。おととい、第6期叡王戦5番勝負の最終戦第5局で豊島将之叡王を下してタイトルを奪い、既に持っている棋聖と王位に加え三冠を達成した。19歳1カ月での三冠同時保持は史上最年少という。将棋界の〝レジェンド〟羽生善治九段の記録22歳3カ月を28年ぶりに更新したそうだ。マスコミをはじめ周りは大騒ぎだが、藤井三冠は至って冷静である。対局後の会見でも「タイトルの数より、自分にとってはどこまで強くなれるかが一番大事」と発言。道を究めるに余念がない。冠は結果にすぎないというわけだ
▼藤井三冠にとって将棋は呼吸をするように自然で、心が熱くなるものなのだろう。見ているこちらまで不思議と胸が弾む。来月は竜王戦だ。今度はどんな強さを見せてくれるのか。