朝食はパンかご飯か。時折話題に上るテーマである。ご飯なら焼き鮭か卵焼きに納豆、みそ汁、パンならバターかマーガリン、ジャムにハムエッグ、コーヒーといったところだろう
▼農林中央金庫の〈昭和世代と平成世代の「食」習慣〉に関する2019年の調査では、普段の朝食にどのような物を食べているかとの問いに72.4%がパン、58.7%がご飯と答えたそうだ(複数回答)。特に20代女性にパン派が多い。今や大きな勢力を持つそんなパン派にとっては、いささか腹立たしい変化でないか。この10月から小麦やマーガリン、コーヒーなどパンには欠かせない食品類が相次いで値上げされたのである
▼佐藤りえさんのこんな短歌を思い出した。「一人でも生きられるけどトーストにおそろしいほど塗るマーガリン」。今まで通りマーガリンに寂しさをぶつけていては、お金がどんどんかさむことになる。いち早くコロナ禍を脱した海外の国々で経済が持ち直し、需要がにわかに高まっているためだという。マーガリンは原料となる大豆や菜種など油脂類が中国で、コーヒーは外出制限が緩和された欧米で品薄となり、価格が高騰しているそうだ。9割を輸入に頼る小麦は主産地の米国やカナダでの不作が響き、「政府売り渡し価格」が19%も引き上げられるのだとか。出るのはため息ばかりなりである
▼それぞれ事情があるのだから上がるのは仕方ない。ならば食後の一服くらいはいつものように楽しみたいという人もいよう。おあいにくさま。紙巻きたばこも1箱当たり20円の増税である。世知辛い。