小説家とミュージシャン、二足のわらじをはく町田康さんがエッセーに書いた辛辣(しんらつ)な一節に思わずにやりとさせられた。言葉を操る仕事なだけに、政治家のよく口にするこんな言い方が常々気になっているらしい
▼政治家は、本当であれば「増徴せんとやっていかれへんに決まってるやろ。理解せんかぁ。ボケ」と怒鳴りたいところを、有権者の前では「ご理解を賜りたい」と言い換えるというのである。「国民の感情に配慮しつつ、反対するのは無知ゆえである、という意味合いはきっちりと残してある」言葉なのだとか。全ての政治家がそうではないものの、普段は特権意識にまみれ、聞く耳を持つのは選挙のときだけの人がいるのも確かである。まあ、面倒見の良さもしょせんポーズにすぎないわけだが
▼われわれがそんな国会議員を見定める機会が再び巡ってきた。臨時国会会期末のきのう、岸田文雄首相が衆院を解散。事実上、選挙戦が始まった。19日公示―31日投開票の超短期決戦となる。野党は対立の図式を作り上げようと与党批判に必死だが、争点となるはずの新型コロナウイルス対策と経済の立て直しについては与野党間にさほど方向性の違いがない。結局はこれまでの各党の振る舞いに審判を下す選挙になるのだろう
▼候補者が地元選挙区で有権者の前に立てるのも実質10日ほど。この広い北海道ではがなり立てる「選挙カー」を見送るくらいが関の山かも知れない。景気のいいことばかり並べ立てる候補者も多くなろう。政治家話法に惑わされず、候補者の本質を見極めたい。