テレビ各局のニュース番組をはしごして見ることがあるのだが、ときに「あれ?」と二度見してしまうような場面に出会う。さっきまで見ていた番組の街頭インタビューで質問に答えていた人が、チャンネルを替えた先の番組でも取材に答えているのである
▼表示される属性は「主婦」から「通勤中のOL」に変わっていたりして。質問や映す角度、場所が違うため、別人かとも思うものの、やはり同一人物のようだ。世間にはインタビュー好きな人がいるものだ―、と素直に感心するほどこちらもお人よしではない。全部が全部とは言わないが、テレビ局の台本通りにしゃべってくれるエキストラを用意しておくケースも中にはあると考えるのが自然だろう
▼こんな事実を知るとなおさらである。テレビ朝日の昼の情報番組「大下容子ワイド!スクランブル」で、視聴者を欺く演出のあったことが明らかになった。「視聴者からの質問にお答えするコーナー」の質問の2割はスタッフが自作したものだったという。21日の放送で大下アナウンサーが経緯を説明し、謝罪した。演出したチーフディレクターの男性は寄せられた実際の質問を見て書いたと語っているそうだ。おかしな話である。本物があるならなぜ偽物を用意する必要があったのか。ご丁寧に質問者の性別をはじめ年齢、住所なども捏造(ねつぞう)していたらしい
▼視聴者の意向などお構いなし。テレビ局に都合のいい主張だけを堂々と放送したいがためにうその質問を用意したと疑われても仕方ない。番組に冠された情報やニュースの名が泣く。