ロシア民話「おおきなかぶ」は今も昔も変わらず、子どもたちに大人気の童話である。福音館書店の絵本(佐藤忠良画、内田莉莎子訳)を思い出す人も多いのでないか。大きな身振り手振りで場面を再現しながら語られる読み聞かせも楽しい
▼おじいさんの植えたかぶがとてつもない大きさに育ってしまったのが事の始まりだった。「うんとこしょ どっこいしょ」。一人で抜こうと頑張ってはみたものの、抜けない。おばあさんを呼んできたが、それでもだめ。孫に来てもらい、3人で引っ張ってもまだびくともしない。さらに犬、そして猫にも手伝わせてあと一息。最後にネズミを連れてきてやっと抜けた。皆が力を合わせれば大きな仕事も必ず成し遂げられることを教える
▼政治もそれと同じだろう。一人では難しくとも多くの人が自分の意志を行動で示せば間違いなく動かせる。あさってはいよいよ衆院選の投票日。政権選択がかかった選挙は実に4年ぶりだ。「おおきなかぶ」を抜きに行かない手はない。経済再生、社会保障、防衛、子育て支援、コロナ対策―。自公連立政権を支持するにせよ、共産党と組んだ立憲民主党など左派野党に期待するにせよ、はたまた独自路線を歩む日本維新の会や国民民主党に望みを託すにせよ、有権者の思いはこの4年でかなり大きくなっていよう
▼どうせ皆が行くのだから自分一人くらい棄権しても大勢に影響はない、とは間違っても考えないことだ。「おおきなかぶ」も小さな1匹のネズミが状況を変える決め手となった。1人が持つ一票の力はそれ以上である。