BCP対策で導入も
池内グループで不動産コンサルティングなどを担う池内環境開発(本社・札幌)は、多目的移動電源車「パワー・サプライ・ビークル(PSV)」を発売した。旧普通免許や準中型免許で運転できる2t車サイズながら、ビル1棟の非常用電源に対応する125kVAの発電容量を持つ。車両のエンジンから駆動を受けて発電するため、発電機を別に積んだり専用の燃料を用意しなくて済み、年1回の消防点検を受ける必要のない手軽さがある。企業や自治体のBCP対策で導入してもらいたい考えだ。
車両の天井に太陽光パネルを備え、エンジン駆動発電との併用で電気を作る。約4㎾時のリチウムイオン蓄電池を搭載し、エンジンを止めても8時間ほど電気を使うことができる。車内に遮音材を取り付け、騒音レベルを平均70―75㏈以内に抑えることで、夜間の使用にも考慮した。
商業施設のエレベーターや業務用の冷蔵庫などで使う単相100Vと、オフィスのパソコンや冷暖房機で使う三相200Vを同時に使えることも特長。発電機を搭載する一般的な電源車と異なり、単相と三相を切り替えずに済むため、災害時の送電作業がスムーズになるほか、幅広い機器に電力供給できる。
車両側面に操作盤を付け、各種ケーブルをコネクター方式で接続するため扱いやすい。雨や雪に当たりにくいようオーニング(ひさし)を設けるなど細部にも配慮。運転席と荷台間は外に出ることなく移動でき、一刻を争う事態でも迅速な作業が可能だ。
一般的な容量100kVA級の発電機は重量があり、4t以上の大型トラックでなければ積むことが難しい。PSVの発電機は重さ1.2tで2t車に積載可能。小型化によって生まれた荷台の空きスペースは、飲料水やカイロなど防災グッズを置くなど有効活用できる。
販売価格は標準仕様で5500万円(税抜き)。同社によると、同等スペックの移動電源車の相場は概算8000万円程度で、従来品より導入費用を3分の2に抑えられるとみる。車体製造元は北海道電気相互(本社・札幌)で、用途に合わせて発電容量を下げたり、ボディーのラッピングデザインを変更することにも応じる。
車両を小型化し、かつ電力の供給方法が簡潔になったため、災害時だけでなく地域のイベントやキャンプ場の電源として利用を見込む。ニセコや富良野など、リゾート施設の非常用電源としても使ってもらいたい考えだ。
札幌市白石区のアクセスサッポロで28日まで開かれた北海道災害リスク対策推進展2021で初披露した。今後は同会場で11月11、12日に開かれる第35回ビジネスEXPOに出展予定。来秋に完成予定のIKEUCHI GATEビルでも防災対策として活用する計画だ。
PSV事業部の横沢明未さんは「PSV導入をきっかけに企業と自治体との災害協定の輪が一層広がり、最終的に地方創生につながれば」と話している。
(北海道建設新聞2021年10月29日付3面より)