男の子が大好きなテレビアニメに『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』(テレビ東京)がある。カードに描かれた怪物などを実体化させて戦う物語だった。これを元にしたゲームも人気で、カードパックをねだられていた親御さんも多いに違いない
▼子どもと一緒に見ていて、テーマ曲の『voice』がまだ耳に残っている人もいよう。「届けたい 届かない この思いを 空まわり したままの 僕の情熱―」。18歳以下の子ども1人当たり現金10万円を一律に支給する。そんな政府の子ども向け支援策がにわかに具体化してきたと聞き、久々に先の曲を思い出した。本当に届けたい人に届くのか。政策が空回りしてしまうのではないか
▼現在の案では生活に困窮するシングルマザー世帯も、新型コロナの影響を全く受けなかった共働き世帯も、子どもが一人なら支給額は同じ10万円である。迅速に届けるためできるだけ条件を付けたくないのは理解できるものの、平等にすれば必ず公平になるものでもない。文部科学省が先月発表した昨年の児童生徒の自殺者数は415人で、前年度に比べ3割以上増えた。自殺は子どもを巡る問題の氷山の一角だがそれがこれだけ大きくなっているのだ
▼コロナで傷んだ親や学校、地域といった大人たちの影響を受けている子どもにも、かなり濃淡がある証拠である。今は社会、経済を正常化させ、伸び伸びと過ごせる環境をつくることが何よりの子ども支援になろう。現金は必要な人に届くようもっと知恵を絞りたい。新政権が勝負を掛ける最強のカードがこれでは。