厚真町内「移動」で「交流」 MaaS事業の取り組み進む

2021年11月22日 15時00分

 人口4400人、高齢化率37%の厚真町でMaaS事業の取り組みが進んでいる。手掛けるのは同町のスタートアップ、ミーツだ。車を持つ住民と移動したい人をマッチングして移動手段を提供し、コミュニティの活性化やまちづくりにつなげたいとする。高齢者が多く交通弱者の増えつつある町で、地域交流の促進を目指す。

 MaaSは〝Mobility as a Service〟の略。目的地への移動を一つのサービスとしてとらえ、最適な交通手段や情報を提供する仕組みだ。

 成田智哉社長が取り組む事業「Mobility Meets Community」は、ある場所から移動したい人とドライバーを結び付けるプラットフォームサービスだ。19年から実証実験を続ける。利用者は高齢者が中心で、近隣や苫小牧方面への移動が多いという。ドライバーには約30人の地域住民が登録している。

「モビリティを通じてまちづくりに貢献したい」と話す成田社長

 電話やLINEで希望の移動場所や日時を受け付け、ドライバーはLINEで通知された情報を見て送迎に応じるか決める。現在、手動でマッチングを担う成田社長は「都市に比べて時間の流れがゆっくりだから、受け付けから乗車までタイムラグがあっても受け入れられる」と言う。

 22年2月をめどにサービスを最終的な形にしたい考えだ。月額で何度でも利用できる方式を想定する。

 多くの過疎地域と同様、厚真町も交通機関は充実していない。バス会社は1社で本数は限られ、タクシーも少ない。免許を持たない高齢者や体の不自由な人が気軽に移動するのは難しい。「毛細血管のように細かな移動を支援したい」と話す。

 地元の高齢者以外に、中高生が近所の人と知り合って多様なキャリアを知る、移住者や旅行者が地元住民と知り合うなどのシーンを想定。外出が増えた高齢者の健康増進など福祉への好影響も期待する。

 移動支援サービスの先には、将来の町の活性化を見据える。「モビリティはあくまでも手段。外出の手段や機会から、人同士の出会いを生み出したい」。早くて安い移動手段が求められる都市と違い、厚真で本当に求められているのは他人とのコミュニケーションや外出機会だと強調する。

 名所や名物、特産品などの特別な武器を使わない「人ベースのまちづくり」が厚真で成功すれば、少子高齢化に直面する国内外の自治体でも再現性があると言及。現場のニーズを踏まえ、テクノロジーありきではない地方創生にしたい考えだ。

 厚真町からほど近い千歳市出身。東大を卒業後、トヨタ自動車に入社した。人事部勤務を経てブラジルに赴任中だった18年、新しい挑戦がしたいと30歳で独立を決めた。退職後は地方を巡る中で「課題の多い地方こそビジネスのしがいがある」と実感。厚真町の支援プログラムを活用しつつ19年、地域イベントなどを企画するマドラー(本社・厚真)を起業した。MaaS事業も元々はマドラーで取り組んでいたが8月、新しく創業したミーツに委ねた。

 自らの強みを「大企業とベンチャー、都市と地方といった対立軸の両方を経験しているから境界を越えて世界をかき混ぜられる」と説明。北海道経済を盛り上げるえぞ財団では団長を務め、同様の経済コミュニティ「ほっとけないどう」でも事務局に携わる。

 昨年6月にはクラウドファンディングで資金を集め、コミュニティスペース「イチカラ」をオープン。カフェを営業し、近所の知人や中高生、都市部の大学生などさまざまな客をもてなしている。

(北海道建設新聞2021年11月19日付3面より)


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