煮て良し、焼いて良し、締めて良しのサバは今も変わらぬ人気の魚だが、「サバを読む」という言い回しは最近あまり聞かなくなったように思う。昔はテレビなどで女優が自分の年齢を言うと、画面のこちら側では「あの女優さん、かなりサバ読んでんじゃないの」とよく冷やかしの声が飛んだものだ
▼大量に取れ、しかも傷みやすいサバを数えるときは早口になったため、勘定と実数が合わなかったのが由来らしい。サバとしては文句の一つも言いたいところだろう。人間が都合よく数字をごまかすのに勝手に名前を使われてはかなわない。ただ、利用されていたのはサバだけではなかったらしい。このところ世間をにぎわせているのはカツオである
▼冷凍カツオの水揚げ量日本一を誇る静岡県の焼津漁港で少なくとも20年前から、漁協職員が水揚げ量をごまかし、窃盗行為を繰り返していた。組織的な犯行だったようで、静岡県警が先月までに漁協職員と水産加工会社幹部、運送会社社員ら7人を逮捕している。揚がったカツオは通常、漁協で計量してから倉庫に入れられるが、職員は計量担当の者とも共謀し、一部を計量しないまま横流ししていたそうだ。水産加工会社は濡れ手で粟(あわ)の大もうけ。職員らは見返りに報酬を得る構図である
▼報道によると、焼津漁港で水揚げされたカツオが消えるのは半ば公然の事実だったという。うわさは30年前からと話す関係者もいると聞く。だとすれば不正は代々続いてきたわけで、闇は相当に深い。サバを読まれたカツオはいったいどれだけの量になるのか。