米児童文学作家ライマン・フランク・ボームの代表作に『オズの魔法使い』(1900年)がある。世界中で絵本や簡略版が発行され、何度も映画やミュージカルにもなっているためご存じの人は多かろう
▼ドロシーという少女が魔法の国「オズ王国」に迷い込み、頭の弱いかかしと心のないブリキの木こり、臆病なライオンと共に冒険の旅をする物語である。家に帰るには悪い魔女を見つけて倒さねばならなかった。そもそもなぜ迷い込んだのか。原因は竜巻である。家ごと吹き飛ばされたのだ。「家はぐんぐん上がっていって、とうとう竜巻のてっぺんまで達してしまった。そしてその高さにとどまったまま、何マイルも何マイルも、鳥の羽みたいに軽々と運ばれていった」(角川文庫)
▼家は米国で〝竜巻街道〟と呼ばれるカンザス州にあった。竜巻は昔から脅威だったのである。それにしても今回の米国の竜巻被害の悲惨さには言葉を失う。ケンタッキー州では死者が100人を超える可能性もあるそうだ。複数の大規模な竜巻が10日夜から11日にかけて米中西部と南部の6州を襲った。竜巻街道の東側である。映像を見ると目を覆わんばかりの光景が続く。通過後の建物などは壊滅状態。倒壊したケンタッキー州のろうそく工場では、まだかなりの人が安否不明という。一人でも多く助かるといいのだが
▼15年前の11月、佐呂間町でも9人が亡くなる竜巻災害があった。実は竜巻の発生数は北海道が全国で一番多い。いわば日本の竜巻街道である。規模こそ米国とは違うが、決して対岸の火事ではない。