未利用石炭で水素製造 三笠市などが12月にも調査へ

2021年12月16日 09時00分

サプライチューン構築目指す

 地域資源を生かしたCO₂フリー水素製造で低炭素なまちづくりを実現へ―。三笠市など申請主体4団体は「木質バイオマスと未利用石炭の石炭地下ガス化によるCO₂フリー水素のサプライチェーン構築に関する調査」で、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業の採択を受け、月内にも調査を開始する。

事業実現に向け三笠市内で研究を重ねてきた

 2022年1月下旬には申請主体4団体のほか、研究機関や大手ゼネコン、電力会社、ガス会社、地質関連の企業などで構成する推進委員会を設置。調査完了は23年2月で、調査結果を踏まえ、23年度以降の実証実験に向け事業申請を進める。

 申請主体は三笠市(水素貯蔵・輸送・利活用)のほか、太平洋興発(水素製造・貯蔵・輸送・利活用)、室蘭工大(水素製造)、大日本コンサルタント(水素利活用)の4団体。調査事業については2日に採択を受けた。地域資源である木質バイオマスと石炭地下ガス化による水素製造・利活用の地域モデル構築の実証実験の設計をし、今後の可能性を調査する。

 三笠市の石炭地下ガス化については11年度から研究を開始。現在は、大学などの研究機関と連携し、石炭と木質バイオマスとのガス化を組み合わせた技術(H―UCG)によって水素を製造する研究開発を進めている。関連する石炭採掘跡へのCO₂固定事業は、雪解け後の22年4月から現地ボーリングなどの実証実験を進める予定で、地質や文献などの調査中だ。

 NEDO委託事業の調査では、水素グリッドの実現に向け、H―UCG技術を活用したCO₂フリー水素による水素サプライチェーンを構築。付帯研究でCO₂固定事業について、CCS(二酸化炭素回収・貯留)の制度上の課題を把握し実現性を明確にする。

 具体的には、水素サプライチェーンの効果(供給側、需要側、貯蔵・輸送側)、事業全体の採算性評価(事業モデル決定、製造、運搬、利活用)、事業効果の評価(CO₂削減、経済波及、レジリエンス機能効果など)、実証事業の検討(スキーム、規模、位置、目的などの検討)、地域利活用モデルの提案などを調査する予定だ。

 石炭地下ガス化による水素製造の可能性調査の事業採択や、企業版ふるさと納税の支援によるCO₂地下貯留研究(CO₂固定事業)の実施などを踏まえ、西城賢策三笠市長はきょう15日開会の第4回定例市議会で、50年までにCO₂の実質排出量ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ宣言」をする予定だ。

 豊かな自然と調和した環境と持続可能な社会を次世代に引き継ぐため、バイオマスなどの再生可能エネルギーや石炭地下ガス化による未利用エネルギーを活用した脱炭素の地球温暖化対策を推進する。

(北海道建設新聞2021年12月15日付1面より)


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