北海道開拓の歴史を知れば知るほど、人間の持つ不屈の精神への畏敬の念が増してくる。情け容赦ない自然に何度たたきのめされてもくじけず立ち上がり、決して歩みを止めることはなかった。冬は凍てつく広大なこの原野で、である
▼不毛の土地を切り開いた民衆一人一人の貢献は何より大きいが、もちろんそれだけで開拓が成就するわけもない。将来の姿を描き、インフラを整えて人々を支えたのが開拓使だった。その大本となったのが黒田清隆が建議し、政府に認められた「開拓使10年計画」である。当時の金額で1000万円、今に換算すると3兆円ともいわれる膨大な予算を投入する夢の計画だった。開始された1872(明治5)年からことしで150年である
▼計画は本道を一大産業基地にしようとの極めて野心的試みだった。その取り組みは道路や鉄道建設をはじめ鉱山開発、農場整備、官営工場設置、人材の育成と多岐にわたる。曲折があったとはいえ、本道の基盤をつくったことは間違いない。開拓の精神を思い出すのに、この150年の節目はちょうどいい機会でないか。本道は今、全国平均を上回るペースで人口が減少し、新型コロナウイルスで頼りにしていた観光や飲食業も力を失っている。素材を供給していた1次産業も販路を失い元気がない
▼良い材料があまり見つからないが、本当に何もなかった明治初期のころに思いをはせればうつむいてばかりもいられまい。危機的状況の中にこそ次代に育つ種は埋まっているという。2022年が始まった。不屈の精神を呼び覚ましたい。