いざというとき、頼りになる人がいるのは安心である。お金に関わることならなおさらだろう。植木等さんの曲『だまって俺について来い』(青島幸男作詞、萩原哲晶作曲)が歌い継がれる理由もそんなところにあるのでないか
▼1番のこんな歌詞が、植木節と相まって強烈な印象を残す。「ぜにのないやつぁ 俺んとこへこい 俺もないけど 心配すんな みろよ 青い空 白い雲 そのうちなんとかなるだろう」。この曲の主人公がお金を融通してくれることはない。ただ、共感して希望を持たせ、つらい状況を笑い飛ばしてくれるところがありがたい。ところが政界にはこの歌詞を途中まで踏襲しながら、最後にはなんとかしてしまう人がいたようだ
▼元公明党衆院議員の遠山清彦元財務副大臣がその人である。日本政策金融公庫の新型コロナウイルス対策特別融資などを巡り、融資を希望する企業や個人と公庫を無登録で仲介していたという。東京地検特捜部が昨年12月28日、貸金業法違反で在宅起訴した。初公判があさって14日、東京地裁で開かれる。起訴状によると遠山被告は2020年3月から21年6月にかけて、貸金業の登録を受けないままコロナで売り上げが減った融資希望者の便宜を図っていた
▼「ぜにのないやつぁ 俺んとこへこい」というわけだが、違法な上に国会議員の威光をきかせるやり方は融資の公平さを欠く。報道によると、公庫も議員案件として特別な対応をしていたようだ。「そのうちなんとかなるだろう」は無責任だが、政治家なら制度を改善する正攻法がとれたろうに。