大人から子どもまで等しく関心を持てる経済ニュースはほとんどないが、これは数少ない例外といっていいのでないか。一報を聞き、いろいろな感慨がこみ上げてきた人もいたに違いない。誰もが知るスナック菓子〝うまい棒〟の値上げである
▼発売元の「やおきん」(東京都)が先日、明らかにした。希望小売価格(税抜き)を10円から12円に改定するという。実に2割の値上げだ。たかが2円、されど2円である。1979年の発売以来、子どもの小遣いでも選ぶ楽しさを味わえるようにと1本10円にこだわってきた。42年もの間コストダウンを重ね、その理念を守り通していたのである。ただ、それももう限界。昨今の原材料や包装資材、物流費などの高騰は社内のやりくりでどうにかできるものではないそうだ
▼物価上昇の波がついにうまい棒をも飲み込んでしまった。チーズ味をこよなく愛する一ファンとしては、これまでの価格維持に感謝しつつも「うまい棒よ、おまえもか」とやや複雑な気分である。これが長らく続いたデフレからの脱却を示す兆候だといいのだが、そう楽観できるものでもないらしい。今の状況は消費や内需の改善による良いインフレでなく、原材料や資源などコストの上昇による悪いインフレの可能性が高いのだとか。良いインフレが付加価値を生み経済の好循環を促す一方、悪いインフレは供給を滞らせ暮らしを圧迫する
▼うまい棒の値上げは4月1日出荷分からになるという。しばらくはキャラクター〝うまえもん〟の笑顔をみるたび切ない思いに駆られるかもしれない。