リサイクル衣料品ブランドも
テックサプライ(本社・札幌)は、ビルメンテナンスと警備業を主体とする会社。建物と人を守る企業姿勢から地球環境の保全にも積極的で、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を象徴したエシカルショップPono(ポノ)を札幌市中央区の円山裏参道に出店する。幡優子社長は「安心して生き続けられるような地球を残すことが、私たちの一つの使命」と話す。
創業は1994年。ビルメン事業を通して環境負荷の低い洗剤やワックスなどを扱うようになり、だんだんと自然環境に重点を置くようになった。
「適切な清掃や管理によって、建物を長く使い続けられるようにするのがビルメン。でも建物を使うのは人間で、健康や衛生、資源など地球環境全体のことを考えていかないと、事業としてバランスを欠くと思った」と自問が続いた。
環境についてさまざま学んでいたころ、日本環境設計(本社・東京)の岩元美智彦さんが書いた本「〝捨てない未来〟はこのビジネスから生まれる」と出会った。ごみを燃料に動く、映画バック・トゥ・ザ・フューチャーのタイムマシン「デロリアン」を東京で走らせた人物。本を読んでから1カ月後にアポイントを取り、徐々に親交を深めていった。
環境事業部は、循環型素材BRINGのTシャツをはじめ、洗剤や竹ストローなど環境に優しいグッズを取り扱う。エシカルショップPonoは、こうした環境事業部の活動を表すアンテナショップの位置付けだ。
BRINGは、着なくなった服を回収してポリエステル原料までリサイクルし、糸や生地、服を作る衣料品ブランド。従来のように廃品を石油由来の方法でPET繊維に一度きり再利用するのではなく、ケミカルリサイクルで何度でも利用可能な原料に変える〝サーキュラーエコノミー〟を象徴する。
テックサプライはこれまで、北海道日本ハムファイターズの公式戦でファンから古着を回収するなど協力した。最近は市立札幌藻岩高校のサスティナブルプロジェクトに協力したり、釧路で地球・環境フォーラムを開催するなど教育分野でも力を入れる。
幡社長は酪農学園大を卒業後、教授の勧めで大手ビルメン会社に入社した。1年半ほど務めたころ、職場結婚を機に専業主婦になる。しかし夫を病気で亡くし、住宅ローンの返済と9、7、4歳の子どもたちを育てていくため30代で起業を決意した。「社長になれば自分で給料を決められるという考えだけだった」
父は厚岸町の酪農家で、釧路太田農協組合長やホクレン副会長を務めた木原竹弘さん。会社を起こすことを伝えたとき「できるのか」と聞かれ、「できるかどうか分からないけど、一生懸命やる」と答えた。「そういうやつには仕事を紹介できないぞ」と言われ、思わず「できます」と訂正した。木原さん流の背中の押し方だったのかもしれない。
日本製紙釧路工場の事業撤退や赤潮による漁業被害など、故郷・釧根地域の疲弊を憂う。「環境を守りながら雇用を生み出す仕組みを作りたい」。幡社長が目指すサーキュラーエコノミーの原点は、ここある。
「人がいなくなると学校や病院など何もかも無くなり、住み続けたくても住めないようになってしまう。それでは食糧基地としての北海道の役割は果たせない。北海道を持続可能な循環型社会にしたい」と意欲を示す。