洋の東西を問わず中世の戦乱期には、戦で攻め入った側が相手側地域の全てをほしいままにしていた。女性も子どもも関係なく人身売買のため拉致されるか殺され、財産や食料は略奪されたのである
▼そういった行為を日本では「乱取り」、「乱妨取り」といい、各陣営も兵士への褒美として認めていたらしい。生活苦にあえぐ農民や食い詰め者が多く兵士になったころのことである。道徳も何もあったものではない。そんな中世のような光景をまさかこの21世紀に見せられるとは思わなかった。ウクライナが2日までにロシアから首都キーウ(キエフ)のあるキーウ州全域を奪還し、これまで見えなかったロシアの蛮行が次々と明るみに出ている
▼解放された地域には民間人の遺体が数多く転がり、拷問を加えられたとみられる人もいたそうだ。それだけでなく、ロシア軍は民家で略奪した物品を売りさばくための市場も開いていたという。ウクライナ軍と共に現地に入った欧米のジャーナリストらが伝えている。現代の「乱取り」だろう。文明人のすることではない。プーチン露大統領はウクライナ領内の同胞を救うため作戦を開始したと強弁し、民間人の被害はウクライナ軍の自作自演と言い放った。新たに出てくるのはそれがうそだという証拠ばかり。もう十分である
▼プーチン氏がそれほど中世にこだわるならお得意の上半身裸で馬に乗り、先頭に立って敵陣へ切り込んでいくべきでないか。銃口が一斉に自分を向いたとき、悲惨な死を遂げねばならなかった住民の気持ちが少しは分かるかもしれない。