落語の「うそつき村」では村の住民が全員うそつきなものだから、何が本当でうそか本人たちにも分からなくなってくる。子どものころからうそばかり聞かされて育つのだ。混乱するのも無理はない
▼村へ父親を訪ねてきた男にその子どもが言うのである。「富士山が倒れそうなんで今つっかえ棒をしに出掛けてる」。それならお母さんはと問われると、「琵琶湖へ洗濯に行ったよ」。これはまいったと男は逃げ帰る。父親が戻ると子どもは一部始終を話し、「そいつが慌てて財布を落としていった」と報告。父親がこちらに出しなさいと言うと、「うそに決まってるじゃないか」。父親は「親にうそを言うやつがあるか!」。もう何が何だか
▼ただの笑い話と思っていたが、やはり世界は広い。どうやらユーラシア大陸の北部にも大きな〝うそつき村〟があるようだ。別名をロシアという。ウクライナでの住民虐殺や民間施設の破壊は、ロシアを陥れようと画策するウクライナや欧米各国政府の陰謀なのだそうだ。政府発表や国内向けの報道はもとより、国連総会でもロシアは代表が真顔でうそを主張する。しかもプーチン大統領の支持率は80%を超え、さらに上昇中という。もはや何が本当でうそか国民にも分からなくなっているのだろう
▼一方で現地の住民や多くのジャーナリストの報告、衛星画像といった客観的証拠からロシアのうそは次々と白日の下にさらされている。事実は隠せない。ただ、この〝うそつき村〟にはこんな警句があるようだ。「プーチン大統領に本当のことを言うやつがあるか!」。