雲研究者として知られる気象庁気象研究所研究官、荒木健太郎さんの『すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)が面白いというので読んでみた。発行から1年で25万部を超え、天気の本としては異例の売れ行きを記録しているらしい
▼一つ一つの項目に美しい写真と親しみやすい図が付けられ、分かりやすくまとめられている。見出しも目を引く。「雲とアツアツおみそ汁は同じ」に興味が湧かないわけはない。気象災害が規模、回数共に激しさを増している近年の状況も、天気への感心の高さにつながっているのだろう。そうだとするとこんなトピックに目が止まるのも自然なこと。「積乱雲には25mプール1万杯くらいの水がある」というのである。水量600万㌧だそうだ
▼これからは積乱雲を見ると思わず体に力が入ってしまうかもしれない。しかも集中豪雨をもたらす「線状降水帯」は、この積乱雲が同じ地域に次々と発生する現象である。プール1万杯分の水が何杯も落ちてくると想像すると…。当然、大きな災害が起こる確率は格段に高まる。ただ狭い範囲で発生するため予測が難しいのも事実。ところが最近、いい知らせを聞いた。気象庁が6月から、この線状降水帯の発生半日前に予報する取り組みを始めるというのである
▼民間船舶の協力で、予測に欠かせない風上側水蒸気量の正確な観測データが得られることになり、提供態勢が整ったという。線状降水帯の雨は降り始めると一気に激しさを増し、住民から避難の機会を奪う。情報と時間が運命を分ける。この半日の価値は大きい。