映画、文学界から性暴力なくそう

2022年04月21日 09時00分

 人間は欲に手足の付いたるものぞかし―。そう見抜いたのは、人情ものに定評のあった江戸時代の浮世草子作者、井原西鶴だった。自らを省みると納得するほかない

 ▼ところで欲といってもいろいろある。食欲や知識欲、生存欲といった生きるために必要なものから、支配欲、色欲といった流されると危険なものまで。欲は一概に悪い情動とはいえないものの、出し方を間違えると自分も他人も不幸にすることがある。歌人で小説家の伊藤左千夫も『独語録』に、「世の中に何が卑しいといって、人の為人の為といいつつ、自分の欲を掻く位卑しいことはあるまい」と書いていた。まさにその通りで、自分の欲望を満たすために善意を装うなど相当下劣な部類に違いない。人を不幸にする欲だろう

 ▼かねがねうわさには聞いていたが、映画界や文学界では実際そんな下劣なやからが大手を振って歩いていたようだ。それぞれの業界で活躍する女性たちが最近、性暴力や性加害をなくすため相次ぎ声を上げたのである。映画界では近頃、人気監督や俳優が女性に関係を強要する不祥事が立て続けに明るみに出た。強い立場を利用したり、仕事の世話を口実にしたり。己の性欲を満たすのに「君のため」を装う、左千夫の最も嫌う「卑しい」行為である

 ▼映画界では原作者の女性20人が性暴力撲滅の声明文を発表。文学界でも多くの女性作家が、SNSで「性暴力のない土壌を作りたい」との発信を始めた。どちらの業界にもそんな土壌があったのだろう。これで悪しき欲は手も足も出ないということになればいいが。


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