ユーチューブやSNSといったネット空間には極端に意見の偏った人があふれている。そんな印象をお持ちの方は少なくないのでないか。実際は利用者の一部にすぎないはずだが、なぜかたくさんいるように感じる
▼国際大グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授が著書『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)でその理由をこう説明していた。「極端な人はとにかく発信する」。いわゆる「陰謀論」がネットではびこるのも同じ仕組みである。東大大学院の鳥海不二夫教授が3月にツイッターを分析し、「ウクライナ政府はネオナチ」というロシアの主張に同調する投稿を拡散したアカウントの約9割が、新型コロナウイルスワクチンに反対する投稿も拡散していた事実を明らかにした
▼何のことはない。怪しげな説があちこちで大量に流布されているため、それだけ陰謀にはまる人も多いのだろうと思いきや、実は同じ人が複数の話題に飛びついているだけだったのである。〝新型コロナは存在しない〟〝ウクライナ危機は米国の策略〟。荒唐無稽だが物事の裏には必ず陰謀があると信じる人には、その方が真実に聞こえるようだ。その上メンバーがいつも同じなため、意見も先鋭化しやすい
▼20日に幹部ら4人が都内の医療機関に侵入して逮捕された、反ワクチン団体「神真都(やまと)Q」はその典型かもしれない。ネットの陰謀論サークルがこのコロナ禍で急発展したのだとか。ネットの中では英雄視もされる「極端な人」も、現実の世の中ではただの危ない人だ。