この連休の前半に小樽の街を散策してきた。昭和の香り残る小さな商店に立ち寄り、うまい物を食べたり雑貨を見たり。歴史的建造物や古びた木造建築も眺めながら、駅前から小樽運河までのんびり歩いた
▼もともと見る場所のたくさんある風情あふれる街だが、今回、何より目を見張らされたのは人の多さである。運河のメインストリートともいえる小樽堺町通り商店街には歩道を埋め尽くすくらいの観光客がいた。新型コロナウイルス感染拡大防止のための、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言のないゴールデンウィークは3年ぶりだ。開放感を味わいたくなるのも無理はない。商業関係者も胸をなで下ろしていよう。小樽に限らず人の流れが活発になってこそ経済が回り、生活も潤う
▼ただ、残念なことに、ここまで持ちこたえられなかった人もいる。共同通信が先月調査したところ、コロナの特例貸し付けを利用したものの、返済できずに自己破産や債務整理に陥った人が全国で約5000人いたそうだ。厚生労働省によると、特例貸し付けは4月23日時点で約321万件、1兆3800億円に上る。共同の調査が任意と考えると、結果は氷山の一角。現在でこの数なら償還が本格化する今後は、さらに破産が増えるに違いない
▼コロナ禍では飲食や観光など、生活娯楽関連の方々の仕事が奪われた。〈いくつかのやさしい記憶 新宿に「英」という店あってなくなる〉俵万智。2年で多くの店がのれんを下ろした。この上、破産となれば悲劇というほかない。コロナ対策は大きな曲がり角に来ている。