完成後「200年」の耐久試験 十勝大橋旧橋コンクリ断片で

2022年05月23日 09時00分

寒地土木研究所が壮大な調査に挑む

 国道241号で帯広市と音更町を結ぶ「十勝大橋」が架け換えられて四半世紀。昭和初期に完成した旧橋は当時の英知を結集した永久橋と期待されたが、十勝川の水防と引き換えに健全なまま役目を終えた。しかし、そのコンクリート断片は、苫小牧市郊外で風雪にさらされながらひっそりと時を重ねていた。寒地土木研究所が「200年」の耐久性を検証する壮大な調査に挑んでいる。(経済産業部 阿部みほ)

初代十勝大橋から採取した供試体のコンクリート桁

 同橋は十勝川初の橋として1905(明治38)年に完成した木橋の開成橋が始まりだ。41(昭和16)年に帯広土木現業所(当時)が9径間、橋長369mの鉄筋コンクリートゲルバー桁橋へ改良。名を十勝大橋に改め、十勝の象徴として市民に親しまれた。

 当時の最新の知見を取り入れて国内最長支間長の41m、橋面積世界最大級の6642m²といった数々の記録を樹立。背景に十勝川の良質な砂、支川の札内川にある丸く粒径がそろった砂利を配合したコンクリートがあった。当時、最高の許容圧縮応力度となる1平方mm当たり6―6.5ニュートンを実現している。

 しかし、81年のいわゆる「56水害」後、同橋付近の水害危険性を重くみた帯広開建は堤防を陸側へ移す「引き堤」を決断。対象堤防にあった十勝大橋は事業の障害となった。88年から約10年かけた河川改修と並行し、96年に上流側へ新たな斜張橋を架設。「初代」十勝大橋は役目を終えた。

 そのとき初代は完成から50年余り。耐凍性を上げるAE剤を用いていないにも関わらず、冬は極寒の十勝でも構造の健全性を保持していた。長期材齢のコンクリート耐久性に関する研究は、世界的に希少のため供試体としての有効活用を望む声が挙がり、北大の佐伯昇教授(当時)らが施工から200年後までのコンクリート状態を観測する計画を立案。96年に始まった橋梁解体と並行し、調査に乗り出した。

完成から200年後の試験箇所を示すプレート

 P6、7橋脚間の桁から供試体として24個のブロックを採取。寒地土研がコンクリートの凍害研究をする美々暴露試験場(苫小牧市美沢)に設置した。新千歳空港に近く、国道36号から目にすることができる。

 解体時を初期値とし、5年ごとに圧縮強度試験、10年ごとに物理化学試験を実施。ブロックから円筒状のコアを抜いて調べる。橋梁完成後80年を迎えた2021年は、5回目の圧縮強度試験を進めた。

 変化の違いを確かめるためブロックの半数には屋根をかぶせているが、雨が当たる方が、強度は上昇傾向にある。当時のセメントは粒が粗かったためで、吉田行主任研究員は「最近、これほど未反応なコンクリートは少ない」と指摘した。

 また、コンクリートを長寿命化させる効果のある火山灰が偶発的に含まれていたことが分かっていて、その点も長期的反応につながっているとみる。嶋田久俊主任研究員は「昔は技術の限界の中で使っていたセメントだが、反応が悪い反面で持続性がある。今後のコンクリート構造に必要な着眼点」と分析した。

 近年は強度向上が停滞気味で、雪が触れる上面は凍結融解で崩壊が発生。今後は傾向の変化が見込まれている。21年の調査結果に関する論文は、寒地土研の月報5月号に掲載した。

 初代十勝大橋は道路橋の役目を終えた現在も、かつての工法を将来の技術革新へ結び付ける架け橋を果たしていた。試験はあと120年。壮大な挑戦は道半ばだ。


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