漫才師にはそれぞれ決まった形があるのをご存じだろう。例えば人気コンビ「オードリー」のそれは〈ずれ漫才〉である。ツッコミの若林が普通の話をしていると、ボケの春日が若干ずれた合いの手を挟む
▼若林「皆さんもね、年末年始休みがあると思いますがね」、春日「あるわけねえだろ!」―といった具合。意味不明なずれの違和感が面白い。ただ実際に春日のような人がいたら、困惑してしまうかもしれない。札幌地裁が5月31日、近隣住民らが北海道電力泊原子力発電所の運転差し止めを求めた集団訴訟で、1―3号機全ての運転差し止めを命じる判決を下した。一報を聞き、今出す判決としては妙にずれていないか、と違和感を持った人は筆者だけでなかろう
▼津波対策が基準に満たないとの理由だが、北電は現在、液状化の懸念を解消するため岩盤に直接設置する防潮堤の計画を進めている。西側の日本海で発生する津波の高さの試算値についても先頃、原子力規制委員会から妥当との評価を受けた。北電『着々とね、津波対策も進めているわけです』、裁判長『ダメじゃねえか』。そんな調子でかみ合わない。手続き上、規制委が認めなければ再稼働できないのは当たり前。裁判所が津波対策を理由に差し止めを命じる意味がない
▼裁判長は北電が立証のめどを立てない点にいら立ちを募らせたのでないか。そんな指摘もしていた。北電に甘さがあったのは事実だが、時間がかかるのは規制委の審査手法による部分が大きい。北電、原告共に控訴するそうだ。次は困惑を納得に変えられるといい。