経済財政運営の骨太方針

2022年06月03日 09時00分

 ことわざの「人のふんどしで相撲を取る」は、他の人の力や道具を使って成功したのに、さも自分の手柄のように振る舞う者をやゆするときに使われる。本人に悪気はないのかもしれないが、見ていてあまり気持ちのいいものではない

 ▼約300年続いた江戸幕府の礎を築いた徳川家康はさすがに違ったようだ。作家坂口安吾が小説『二流の人』に、「家康は人の褌を当にして相撲をとらぬ男であった」と書いている。一国を治める立場は同じでも、資質まで同じというわけにはやはりいかないらしい。岸田首相である。政権の掲げる「新しい資本主義」実現に向けた経済財政運営の骨太方針が過日発表されたものの、いつか見た政策ばかりが目に付く

 ▼変化する社会に対応するための就労者100万人学び直し支援が目玉の一つだが、これは2018年、安倍政権で既に閣議決定していたもの。科学技術や脱炭素・デジタル、人への投資など成長4分野への重点投資も、菅政権で進めた4課題の焼き直しでないか。首相就任直後に打ち出した岸田カラーの「令和の所得倍増」も、いつのまにか「資産所得倍増」に変わっている。看板は似ているが倍増が投資頼りになってしまった。しかもその具体策も決めるには年末までかかるのだとか。今のところ岸田首相のふんどしは見当たらない

 ▼安吾の家康評はまだ続く。「奇策縦横の男である故奇策にたよらぬ家康。彼は体当りの男」。ここまでの首相の経済運営を見ると、石橋をたたくだけで渡らない及び腰の男と映る。ご自分のふんどしを締め直してはいかがか。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 川崎建設
  • 東宏
  • 北海道水替事業協同組合

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,465)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,356)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,217)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,072)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (867)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。