ユダヤ人とアラブ人が今も血みどろ戦いを続けるパレスチナ問題の発端は、第1次世界大戦中に交わされたサイクス・ピコ協定だった。英国とフランス、ロシアが1916年5月、オスマン帝国領の分割について裏で取り決めをした秘密協定である
▼英国はパレスチナ地域をわが物としたが、第2次大戦後に維持できなくなり、対応を国連に丸投げ。任された国連が地域をユダヤ国家とアラブ国家に分割したのだった。間違いは明らかだろう。秘密協定も国連も当該地域の意向を無視して境界線を引いた。イスラエルは建国に湧いたものの、土地を失ったアラブ人は納得しない。他人が勝手にわが家を半分に分け、上がり込んできたようなものだ
▼当事者の頭越しになされる決定は、後々まで争いの火種になることが多い。ロシアの侵略で苦境に立たされるウクライナに関しても、最近少々気になる動きが出てきた。停滞が続くウクライナの穀物輸出を巡り、ロシアとトルコが2国で再開協議を進めているのである。報道ではウクライナによる黒海沿岸の機雷除去をロシアは求めているという。トルコは存在感を示すために仲介役を買って出たが、ウクライナは当事者抜きの協議に反発しているそうだ
▼もう一つ。プーチン露大統領とマクロン仏大統領、ショルツ独首相が先月末に1時間以上、電話で会談した。立ち位置が定まらなかったマクロン、ショルツ両氏はそれを機に、主戦論から停戦論にかじを切ったように見える。あちらでもこちらでも、ウクライナの頭越しに秘密の約束などしていなければいいが。