過日亡くなった旧国鉄分割民営化の立役者、葛西敬之JR東海名誉会長が雑誌『文藝春秋』(2021年11月号)の対談で現代の政治についてこう語っていた。テーマは「危機のリーダーの条件」である
▼「強いリーダーのトップダウン方式は不可能。今は、組織に支えられた中庸なタイプの人物に任せつつ、非連続な改革に備えるしかないのが実情だと思います」。足踏みが延々と続く政治を深く憂えていたようだ。どの政治家も強いリーダーシップを発揮しようとせず、責任も引き受けない。そんな戦時下日本の「無の政治」が再来しているのではと気にしていた。共感する国民は多いのでないか。物価急騰や円安、エネルギー危機、安全保障環境の変化と懸案が山積みなのに、政治家は口だけでほとんど実行しない
▼これでは〈オレオレ詐欺〉ならぬ〈ヤルヤル詐欺〉である。国会議員にその辺の自覚はあるのだろうか。この機会にしっかり見極めさせてもらうとしよう。第26回参院選がきょう、公示される。改選定数124(選挙区74、比例代表50)と神奈川の欠員1を合わせた125議席をかけて500人を超える候補者が争う。124議席に370人が立った前回の19年参院選を上回る激戦である
▼各党もにわかに活気づいてきた。こんな川柳を思い出す。「選挙家と呼び名変えよう政治家を」竹田カボス(『平成川柳傑作選』毎日新聞出版)。またぞろ勝った負けたと大騒ぎして仕事をしたつもりになり、選挙が終われば「無の政治」に逆戻りするのでないか。今の日本にそんな余裕はないのだが。