奪われるサハリン2

2022年07月08日 09時04分

 今から18年前の2004年4月21日付本紙記事に、藤建設(稚内)の土木技術者のこんなコメントが載っていた。「言葉の問題があり意思の疎通にやや不安は感じますが、稚内の協会員としてできる限りの力を出していきたい」

 ▼稚内建設会館とロシア企業などの合弁会社〈ワッコル〉のサハリンプロジェクト本体工事初参入で、現場の技術指導員として派遣されることが決まり、その意気込みを語っていたのだった。ロシア極東サハリン石油・天然ガス事業〈サハリン2〉は本道から地理的に近いこともあり、稚内はじめ本道の企業も多く参加した。言葉や技術、商習慣の違いでもめ事も少なくなかったが、巨大国際プロジェクトを経験する意義は大きい。本道は当時、サハリン熱ともいうべきものに覆われていた

 ▼それだけに関係した方々は今、複雑な思いだろう。プーチン大統領が先月30日、サハリン2を事実上、露政府に接収する大統領案に署名。メドベージェフ前首相も5日、日本の締め出しを表明した。サハリン2は三井物産と三菱商事が合わせて20%以上を出資する日本の正当な権益事業である。それを露政府が新設する会社に移管し、資産も全て無償譲渡するよう命じたのだから、もはや略奪といっていい。ある意味、ウクライナに対する蛮行と一緒だろう

 ▼日本のLNG調達に影響が出るのは必至で、エネルギー危機に悩む政府はこれから難しい対応を迫られる。それにしても宗谷海峡の両岸で苦労して築き上げてきた信頼関係を、一瞬にして破壊するプーチン氏の暴挙にはあきれるほかない。


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