地方鉄道のあり方

2022年07月27日 09時00分

 人と人が理解し合うのを妨げる障害を〈バカの壁〉と名付けて一躍有名になった養老孟司東大名誉教授をご存じだろう。もう20年近く前のことになる。教授はその後も幾つかの壁を取り上げてきたが、近著『ヒトの壁』(新潮新書)では人生そのものに切り込んでいた

 ▼相変わらず話題はあちこちに飛ぶ。ただ、そんな中で特に興味を引かれたのは夏の広葉樹の茂り方である。「あれこそ自然の出した答え」だという。われわれが目にするのは広葉樹が光を得ようと枝葉を広げている姿。自然の結果であり解答だと教授は指摘する。それが答えなのだから、変にいじくっても意味はない。人生も同じで、考えるべきは「問題は何だったのか」。現象の原因や経緯に目を向けよというわけだ

 ▼深刻な赤字に悩むJRの地方鉄道の現状もこの広葉樹の茂り方を巡る話とよく似ている。利用者が減り、路線として寂れていくのは枝葉が枯れていくようなもの。自然ではないものの、社会が出した答えといえるのではないか。例えば本道である。地方鉄道に活気があった1965年の人口は517万人。今も516万人とほぼ同じなのに往時の輝きはない。道路という木が大きく成長し、鉄道に栄養が回らなくなったのだろう

 ▼地方鉄道のあり方を議論する国土交通省の有識者会議が25日、提言をまとめた。輸送密度が1000人未満の区間を対象に新たな協議機関を設け、バス転換や廃止の検討を促すものだ。それも大切だが、地方の衰退や地域格差といった本当の問題に取り組まねばどんな対策も結局は徒労に終わる。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 日本仮設
  • オノデラ
  • 東宏

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,402)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,269)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,234)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,118)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (836)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。