絵本は小さな子どもが読んで楽しむものとの見方が一般的だが、なかには大人が大切なことに気付かされる作品もある。最近たまたま手に取った長谷川義史さんの『ぼくがラーメンたべてるとき』(教育画劇)も、そんな絵本の一つだった
▼タイトル通り、一人の男の子が家でのんびりとラーメンをすすっているシーンから物語は始まる。隣でネコのミケがあくびをしていて、「ミケが あくびしたとき…」と続く。そこからはこの繰り返し。「となりの まちの おとこのこが バットを ふったとき…」「その となりの くにの おんなのこが あかちゃんを おんぶしたとき…」。世界中で同じ瞬間に起きている何気ない日常の一こまが、ページをめくるたび目に飛び込んでくる
▼ところが最後は「その また やまの むこうの くにで おとこのこが たおれていた」。戦争に巻き込まれて命を落とした男の子が、焼け落ちた街に横たわっているのだ。今も戦争が行われている事実を突き付けられる。77回目の終戦記念日が近い。日本では昔の過ちを反省し、ある意味平和を謳歌(おうか)する日になっているが、実は世界には一日として終戦の日がないのだった。悲しいことにそれが現実である
▼今もロシアのウクライナ侵略は続き、中国は台湾奪取の野心を隠そうともしない。中東パレスチナ自治区のガザでは、5日の空爆で44人が犠牲になった。まさに日本で男の子がのんびりラーメンを食べているとき、世界のどこかで砲撃におびえている人がいるのである。忘れてはいけないことだろう。